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演劇/ミュージカルの感想・劇評・観劇スケジュール など

志田未来、初舞台! │ 『オレアナ』 速レポ

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昇進を目前に控え、安定した晩年の設計図で頭がいっぱいの若き大学教師[ジョン]。

一人の女子学生[キャロル]が彼の研究室を訪れ、授業についていけないとパニックに陥り、どうか単位を取らせて欲しい、と涙を浮かべて懇願する。

彼女を慰めようと、紳士的な態度で相談に応じるジョン。

しかし後日、キャロルがジョンを“ある理由”で大学当局に訴えたことにより、前途洋々だったはずの彼の未来は打ち壊されていく…。

言葉を尽くせば尽くすほど深まるディスコミュニケーションの溝。

彼女が彼を訴えた“理由”とは?彼は彼女に“何を”したのか?

(パルコ劇場ウェブサイト http://www.parco-play.com/web/program/oleanna/

 

志田未来田中哲司の二人芝居『オレアナ』、水曜日に観劇。

志田未来、良かった。

実は、見る前は期待していなかった。TVドラマや映画で演技が評価されているので意外だと思われるかもしれないが、カメラワークや編集の入る映像作品と目の前の固定された空間をリアルタイムで見せ続ける舞台とは違う。だからドラマ/映画でいいと思っていた俳優が舞台の上ではイマイチということはよくある。その上志田未来はまだ22歳、舞台は今回が初めてだ。だが、志田未来は私の予想を見事に裏切り、初舞台にも関わらず舞台用の表現をしっかり身に付けていた。ロングショットに耐える演技。日常の切り取りではないリプリゼンテーションの能力。2時間、集中力も切れることがなかった。すごい!すごい!すごい!初めての挑戦で新しい表現をここまで習得するとは!ものすごい努力家なのか?それとも初めから多様な見せ方を知っている天才なのか?どちらにしてもものすごい可能性を持った若き女優さんだ!

芝居の内容は一言で言って「タフ」。

チラシの紹介文には「セクシュアルハラスメント」「パワーバランス(力関係)」など社会性がありながら今では馴染みの単語が並んでいるが、「ああセクハラ問題を取り上げた作品か。」と知ったような気で観ると痛い目に合う。(いい意味で)

オレアナ』の登場人物は大学教員ジョン(田中哲志)と、ジョンのクラスの女子学生キャロル(志田未来)の二人のみで、キャロルがジョンの研究室に訪ねてきている、という状態で幕が上がる。そして全三幕、授業が全く分からないというキャロルとそれに応対するジョンの会話で進行するのだが、キャロルは考えが極端で発言が変で、ジョンは理屈っぽくて話が長く、その上二人はお互いに言っていることが伝わらないし相手の言葉を受け取らない。そんなのが延々と続いて、途中休憩に入るまでには私はもう田中哲司(ジョン)に「うるさい、だまれ」と思い、志田未来(キャロル)が大嫌いになってしまっていた。
その後話は大きく展開し、結末に向かっていくのだが、普通は話に沿って観ているこちらの気持ちも変化し最後にはカタルシスのようなものを得るところを、この劇は見れば見るほど苛立ちと憤りが募っていき、劇が終わっても私の心はさっぱり終われなかった。マメットは観客に何を期待していたのか、自分はこの劇をどう消化すべきなのか、答えの出せない問いが胸の内に強く、深く、渦を巻いておさまらない。マメット以前の演劇作品では、観客にこうしたことはここまで強く問われない。これが現代アメリカ演劇だ。

公演は11月29日(日)まで渋谷・パルコ劇場にて。残席わずか。各日開場時間から当日券の販売あり。

 

オレアナ
分類:演劇(アメリカ)
作:デイヴィッド・マメット(David Mamet)
翻訳:小田島恒志
演出:栗山民也
出演:田中哲司志田未来
日程:2015年11月6日(金)~2015年11月29日(日)
場所:パルコ劇場
チケット:(オンライン)ぴあ http://pia.jp/t/oleanna/ ・ローソン http://l-tike.com/oleanna/ ・イープラス http://eplus.jp/oleanna/

2015年12月の演劇何観る?(2): クリスマスミュージカル『スクルージ』・『バグダッド動物園のベンガルタイガー』

クリスマスは子どもから大人までみんな大好き、アメリカ・ヨーロッパのクリスマスの定番…

 

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ミュージカル『スクルージ
種類:ミュージカル(イギリス・日本語)
原題:Scrooge
原作:チャールズ・ディケンズクリスマス・キャロル』(Charles Dickens 『Christmas Carol』)
脚本・音楽・作詞:レスリー・ブリッカス(Leslie Bricusse)
演出:井上尊晶
訳詞:岩谷時子
出演:市村正親(エベネザー・スクルージ)、武田真治(ボブ・クラチット)、他
日時・場所:
2015年12月4日(金)~15日(火) 赤坂ACTシアター
詳細・チケット:
公演オフィシャルサイト(ホリプロhttp://hpot.jp/stage/scrooge-2015
(オンライン)・ぴあ http://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=1528675 ・ イープラス http://eplus.jp/sys/T1U14P002105500P0050001ローソンチケット http://l-tike.com/d1/AA02G03F1.do?DBNID=3&ALCD=1&PGCD=273049
※子ども料金あり

 

守銭奴スクルージは、町一番の嫌われ者。

クリスマス・イブの日も周囲に温かい言葉一つかけるでもなく、自分の

金銭欲を満たすためだけに生きている。

スクルージの事務所の事務員はボブ・クラチットただ一人。

この忠実な男を安月給で雇い、クリスマス休暇も一日しか与えない始末。

ところがその晩、一人ぼっちで過ごしていたスクルージの前に、かつてのビジネス・パートナーだったマーレーの亡霊があらわれ、これから自分の過去・現在・未来をめぐる旅へ連れ出されるだろうと伝える。

未来の自分の衝撃的な姿を見たスクルージは、クリスマスの本当の意味に気がつく・・・・・・

(公演オフィシャルサイト http://hpot.jp/stage/scrooge-2015/story

 

アメリカやヨーロッパでは知らない人はいないクリスマスの定番のお話。原作は19世紀イギリスの作家、チャールズ・ディケンズ(Charles Dickens)の小説『クリスマス・キャロル』(『Christmas Carol』 1843)。「スクルージ」というのは主人公の名前。たくさんの映画化、ミュージカル化、絵本化作品があるが、中でもこのミュージカルは、最も有名なミュージカル映画化作品『スクルージ』(1970)を舞台化したもの。舞台化したのは、映画中の歌を作詞・作曲したレスリー・ブリッカスなので、「サンキューベリーマッチ」など映画中の有名な歌を生で聞くことができる。

この公演は子ども料金が設定されていて、子どもも楽しめるようになっている。が、内容はもちろん、役者を見ても、いわゆる「子ども向けミュージカル」のような子供だましの舞台とは違う。主演の市村正親は、登場するだけで舞台がぱっと華やぐような役者で、『スクルージ』のように主役を中心にした舞台にはぴったり。歌声、演技、存在感、どれもいい。全編とても贅沢で楽しい舞台になると思う。

 

ホリプロスクルージ』CM。以前の公演の様子が映っていてどんな公演か分かる:

 http://youtu.be/qcK9NV-QOv4

 

 

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バグダッド動物園のベンガルタイガー』
(『Bengal Tiger at the Baghdad Zoo』)
種類:演劇(アメリカ・日本語)
作:ラジヴ・ジョセフ(Rajiv Joseph)
翻訳:平川大作
演出:中津留章仁
出演:杉本哲太風間俊介安井順平、谷田歩、他
日時・場所:
2015年12月8日(火)~27日(日) 新国立劇場 小劇場
詳細・チケット:
新国立劇場ウェブサイト内公式ページ:<http://www.nntt.jac.go.jp/play/performance/150109_006140.html>・
ぴあ <http://ticket.pia.jp/pia/ticketInformation.do?eventCd=1521640&rlsCd=004>・
イープラス <http://eplus.jp/sys/T1U14P002167222P0050001> 他

 

 新国立劇場は、考えさせられる公演、興味深い公演など、上演することにとても意味があるがあまり上演されない作品(恐らく採算が取れないため)をしばしば上演してくれる。今回バグダッドを舞台にした演劇が上演される。

 

空爆によって破壊されたバグダッド動物園、ベンガルタイガーの檻の前。ふざけあっていた警護のアメリカ兵が、腹をすかせたトラに手を噛みちぎられる。トラは即座に別の兵士に撃ち殺されるが、幽霊となって撃った兵士に取り憑く。取り憑かれた兵士はやがて精神に異常をきたし、自殺。これまた幽霊となり、義手をつけた元相棒に取り憑く。トラの幽霊、アメリカ兵の幽霊、さらにはサダム・フセインの二人の息子の幽霊、殺された女の子の幽霊……幽霊と現実を生きる人間とが綯い交ぜとなり、バグダッドに渦巻く欲望と残虐さがあらわになっていく。

新国立劇場ウェブサイト 公演情報『バグダッド動物園のベンガルタイガー』 <http://www.nntt.jac.go.jp/play/performance/150109_006140.html>)

 

中東についての演劇というのは(日本では)とても珍しい。以前パレスチナのアルカサバ・シアターによる『アライブ・フロム・パレスチナ―占領下の物語―』を観て強い衝撃を受け、その感触が今も残っている。『バグダッド動物園のベンガルタイガー』はアメリカの劇作家の視点で書かれたものではあるが、この貴重な機会に観に行くことにした。

ところで、出演者の一人、風間俊介さんは、ジャニーズの方らしい。私が言うのもおこがましいが、こういった社会性をもった作品でジャニーズの方を配したのは素晴らしいと思う。

2015年12月の演劇何観る?(1): 『シカゴ』来日公演!

12月は絶対…

 

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来日公演は、ミュージカルの本場ブロードウェイで現在活躍中の俳優たちによる、圧巻の歌唱力と演技のステージを体験できるチャンス。今回来日の『シカゴ』は、エンターテインメント性たっぷり、大人向けのショー。初心者も舞台好きも、一人でもカップルでも友達同士でも、誰でも楽しめる。(字幕付き)

 

ブロードウェイミュージカル『シカゴ』アメリカ・カンパニー来日公演
種類:ミュージカル(アメリカ・来日公演)
作曲:ジョン・カンダー(John Kander)
作詞:フレッド・エブ(Fred Ebb)
脚本:フレッド・エブ、ボブ・フォッシー(Bob Fosse)
振付:ボブ・フォッシー
出演:シャーロット・ケイト・フォックス(Charlotte Kate Fox・ロキシー・ハート役)、アムラ=フェイ・ライト(Amra-Faye Wright ヴェルマ・ケリー役)、トム・ヒューイット(Tom Hewitt ビリー・フリン役)、他アメリカ・カンパニー
日時・場所:
2015年12月4日(金)~23日(水) 東急シアターオーブ
2015年12月26日~27日(日) 梅田芸術劇場メインホール
詳細・チケット:公演オフィシャルサイト www.chicago2015.jp (オンライン)・ぴあ http://pia.jp/t/chicago/ ・イープラス http://eplus.jp/chicago/ローソンチケット http://l-tike.com/chicago

 

舞台は「狂騒の時代」と呼ばれる1920年代半ば、アメリカ・イリノイ州シカゴ。夫とその不倫相手を殺したヴェルマ・ケリーと、自身の不倫相手を殺したロキシー・ハート、二人の女性殺人犯は、それぞれ弁護士ビリー・フリンの手腕でメディアの注目を集め、一躍時の「スター」となる。二人の名声への欲望、彼女たちを取り上げるマスコミ、次々と変わる流行、腐敗した刑事司法制度などを、その時代のヴォードヴィル(歌とダンスのショー)風ジャズ音楽・ダンスとともに描く。

 

『シカゴ』はとにかく楽しくて、セクシーで、かっこいい。ブロードウェイミュージカルの中でも最も人気のある演目の1つで、初演は1975年で2年間上演されたが、1996年のリバイバル公演(=再演)が人気を集め、以来19年間、現在もブロードウェイ(アンバサダーシアター)で上演され続けている。

『シカゴ』は内容もおもしろいが、特にその音楽とダンスが良く知られている。「ジャズの~」とか「ジャジーな~」と紹介されるこの作品の音楽は、既存のジャズ音楽ではなく、アメリカの1920年代を舞台上に再現するため、ジョン・カンダーが作曲したもの。先の第一次世界大戦は、大規模な無差別・大量殺戮が初めて行われた戦争で、人々は個人の尊厳や、それまで信じていた神の存在を見失った。1920年代はその遺産のような時代で、国が物質的に豊かになる一方、人々の間では刹那的で享楽的な気分が広がっていた。禁酒法(アルコールの製造や販売を禁止する法律。キリスト教と関わりが深い。)が敷かれたが、アルコールの密造・密売が盛んになり、却って違法行為・法制度の崩壊を促した。カンダーの音楽はそうした「狂騒の時代」の雰囲気をよく表している。

また音楽以上に、この作品の全体の雰囲気は、ダンスが決めていると言っても良い。『シカゴ』は、多くのミュージカル・ミュージカル映画の振付を行った振付師、ボブ・フォッシー(Bob Fosse)がフレッド・エブと共に脚本を書き、自ら監督をしてできた作品で、このダンスを持って、作品自体がヴォードヴィルと呼ばれる当時の歌とダンスのショーのようになっている。現在の振付担当者もかつてボブ・フォッシーに師事しているが、『シカゴ』はフォッシー亡き後、監督・演出が他の人になっても、フォッシーオリジナルの振付が大切にされている。

今回の公演は、NHKの朝ドラ『マッサン』のエリー役で人気となったシャーロット・ケイト・フォックスがロキシー役で主演を務める。私は実は『マッサン』を見ていなかった(!)のだが、ある番組に彼女がドラマの番宣で出ているのを見て、かわいらしさにハートを射抜かれ、即刻『シカゴ』のチケットを買ってしまった。(そして宣伝していたドラマも観た。)こんなにかわいくて優しい雰囲気の女性がどうやって野心家でセクシーなロキシーに変身するのか、楽しみすぎる。

ところで、私はてっきりシャーロット・ケイト・フォックスは日本の女優としてゲスト出演的に日本での公演にだけ出るのかと思っていたが、実は大胆にもこの公演でブロードウェイ・デビューし、10月31日昼公演と、11月2日から11月15日までの2週間、アンバサダー・シアター(ブロードウェイで『シカゴ』を上演している劇場)の舞台に立つらしい(*1)。動画があったので観たが、初々しすぎてちょっと心配。ちなみにヴェルマ役のアムラ=フェイ・ライトは2006年からブロードウェイで『シカゴ』に出演、その前もイギリスや南アフリカでヴェルマ役を演じている大ベテラン(*2)。ビリー・フリン役のトム・ヒューイットもブロードウェイ常連のミュージカル俳優で、ビリー・フリン役も何度も演じている(*3)。

 

デビュー直前アメリカbroadway.comのインタビューと稽古の様子の動画(英語):
http://www.broadway.com/videos/156374/new-chicago-stars-charlotte-kate-fox-jason-danieley-bring-the-old-razzle-dazzle-to-the-long-running-smash/#play

 

ブロードウェイ・デビュー公演の動画:
https://www.youtube.com/watch?v=qPAHdV2Gkh8&feature=youtu.be

 

ブロードウェイデビューについてぴあの記事:
http://ticket-news.pia.jp/pia/news.do?newsCd=201511020004&utm_source=mail20151104&utm_medium=others_stage&utm_campaign=chicago

 

参照:
*1 Telechargeサイト <https://www.telecharge.com/Broadway/Chicago/Overview>
*2 broadway.comサイト内俳優紹介ページ <http://www.broadway.com/buzz/stars/amra-faye-wright/profile/>
*3 Tom Hewittオフィシャルサイト <http://pamij.tripod.com/>、broadwayworld.comサイト内出演作品紹介ページ <http://www.broadwayworld.com/people/Tom-Hewitt/#>

2015年11月の演劇何観る?:現代アメリカ演劇と世界の名作 『オレアナ』 『桜の園』

11月はとても珍しい公演がある。

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オレアナ
分類:演劇(アメリカ)
作:デイヴィッド・マメット(David Mamet)
翻訳:小田島恒志
演出:栗山民也
出演:田中哲司志田未来
日程:2015年11月6日(金)~2015年11月29日(日)
場所:パルコ劇場
チケット:(オンライン)ぴあ http://pia.jp/t/oleanna/ ・ローソン http://l-tike.com/oleanna/ ・イープラス http://eplus.jp/oleanna/
詳細:パルコ劇場公演情報 http://www.parco-play.com/web/program/oleanna/#ticketsオレアナ特設サイト http://www.parco-play.com/web/play/oleanna/

 

作者デイヴィッド・マメットは、現代アメリカ演劇を代表する現役の劇作家(現在67歳)。『オレアナ』(『Oleanna』)は1992年、マメット45歳の時に発表の作品。

昇進を目前に控え、安定した晩年の設計図で頭がいっぱいの若き大学教師[ジョン]。

一人の女子学生[キャロル]が彼の研究室を訪れ、授業についていけないとパニックに陥り、どうか単位を取らせて欲しい、と涙を浮かべて懇願する。
彼女を慰めようと、紳士的な態度で相談に応じるジョン。
しかし後日、キャロルがジョンを“ある理由”で大学当局に訴えたことにより、前途洋々だったはずの彼の未来は打ち壊されていく…。
言葉を尽くせば尽くすほど深まるディスコミュニケーションの溝。
彼女が彼を訴えた“理由”とは?彼は彼女に“何を”したのか?

(パルコ劇場ウェブサイト http://www.parco-play.com/web/program/oleanna/

 

オレアナ』は二人芝居。ジョンの研究室(大学内の先生の個室)といういわば「密室」の中、二人だけの会話で劇が進行していく。この濃い空間の中、観客は登場人物とともに、緊迫、力関係の変化、混乱、そしてほんの少し前までその手に掴みかけていた幸せの全てが目の前で壊れていくジョンの絶望と憤りを味わえる。 

それまで、アメリカ演劇と言えばもっぱら家庭を舞台にしたものだった。ユージーン・オニール、テネシー・ウィリアムズアーサー・ミラーなどの、アメリカ演劇を代表する劇作はみな家庭や家族を描き、その伝統はその後も続いた。そんな中、デイヴィッド・マメットは家庭から外に目を向け、作品を書いた。出世作となった『アメリカン・バファロー』(1977・ニューヨーク劇評家賞)、劇作家としての地位を確固たるものにした、『グレンキャリー・グレン・ロス』(1983・ピューリッツァー賞)では資本主義社会におけるビジネスの世界を、発表と同時に全米で議論を呼んだ本作『オレアナ』(1992)では当時の時事問題を扱った。マメットは、旧世代の家庭劇の伝統と決別し、アメリカ演劇を次のステージへと進めた重要な作家の一人なのだ。アメリカ演劇の世代交代という大きな役割を果たしたマメット作品の力を、劇場で体感したい。 

ちなみに、日本での『オレアナ』の上演はパルコ劇場のレパートリーで、1994年初演以来、今回で18年ぶり3回目の公演という(パルコ劇場の『オレアナ』専用サイト)。…つまりめったに見られない。しかも志田未来が出演するということは、ファンが集まり案外売り切れてしまうのではないか?のんびりしていたが、早くチケットを買わねば。

 

 

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桜の園
種類:演劇(ロシア)
作:アントン・チェーホフ
日時:2015年11月11日(水)~29日(日)
場所:新国立劇場 小劇場
詳細・チケット:新国立劇場ウェブサイト内『桜の園http://www.nntt.jac.go.jp/play/performance/150109_006139.html

 

1904年発表の、世界的に有名なロシアの戯曲。”帝政末期のロシアを舞台に没落遺族の悲喜劇を描く、チェーホフ最後の名作戯曲” (チラシ裏)。

新国立劇場で上演される公演は正統派(?)な演出が多く、料金も手ごろなので、海外の名作を初めて観るのにおすすめ。

…と思ったらプレイガイドでの販売分はすでに完売。チケットは劇場に直接問い合わせを。

 

追記(11/10 新国立劇場メルマガ):

ご好評につき発売後、瞬く間に販売予定枚数終了となりましたが、当日券のご用意が全公演でございます。
ぜひお求めください!
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~「桜の園」当日券情報~
【Z席(税込1,620円)】
小劇場バルコニー席の一部をZ席として、毎公演10席ずつご用意しています。
公演当日朝10:00より新国立劇場ボックスオフィス窓口のみで販売。1人1枚。電話予約不可。
舞台が見づらいお席ですので、ご了承の上、お求めください。
【当日券】
公演当日にZ席以外の残席がある場合、ボックスオフィス(窓口・Web・電話予約)、チケットぴあ全国各店舗では朝10:00より販売いたします。
⇒前売りの状況はこちらから確認!
※既に完売している日も多くございますが、直前のキャンセルなどでチケットが出る場合もございます。WEBボックスオフィス、そしてtwitterの当日券情報をぜひご確認ください。
http://nntt.pia.jp/event.do?eventCd=1521638
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桜の園」といえばチェーホフが書いた最後の戯曲で、昔から日本では深く馴染みがあります。
1915年(大正4)の日本初演から愛され続け、100年目に当たるこの2015年、新国立劇場で上演いたします。
演出に鵜山仁、数々の名女優が演じてきた大役ラネーフスカヤ夫人に田中裕子、対する農奴の息子ロパーヒンに今大注目の実力派若手俳優、柄本佑を迎えました!
充実したカンパニーでお贈りする「桜の園」。舞台美術や照明など細部まで目が離せない作品になっております。どうぞご期待ください!

 

2015年10月あと半月だけどやっぱり演劇何か観る?:2つの劇中劇

10月も残り半分。

先月『NINAGAWA マクベス』が良すぎて2回も観てしまったので(人生初)、今月はお休みにしようと思っていたが、なんかすごく良さそうなのやってる。

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井上ひさし作『マンザナ、わが町』
種類:演劇(日本)
日時:2015年10月3日(土)~25日(日)
場所:紀伊國屋ホール(新宿東口)
チケット:(オンライン)イープラス http://eplus.jp/komatsuza・(電話予約)こまつ座 03-3862-5941 他
詳細:こまつ座ウェブサイト http://www.komatsuza.co.jp/program/

 

舞台は太平洋戦争中、真珠湾攻撃後のカリフォルニア州の日系アメリカ人強制収容所「マンザナ強制収容所」。そこに収容されている日系人のうち5人が収容所長から呼び出され、「マンザナは強制収容所ではなく、日系人が自主的に運営する町」という主旨の朗読劇『マンザナ、わが町』を上演するよう命令される。(チラシ・こまつ座サイトから要約・編集)

現代日本文学を代表する小説家・劇作家・放送作家、井上ひさしが1993年に発表した作品で、こまつ座井上ひさしが作った劇団)が戦後70年を記念し、18年ぶりに再演している。興味深い上、貴重な公演。

時々、再演に取り組んでくれたことそのものに感謝したくなる公演がある。この公演はまさにその一つ。

 

 

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松本幸四郎演出・主演 『ラ・マンチャの男
種類:ミュージカル (アメリカ)
日時:2015年10月4日(日)~27日(火)
場所:帝国劇場
チケット:(オンライン・電話・窓口予約先一覧)帝国劇場ウェブサイトhttp://www.tohostage.com/lamancha/ticket.html
詳細:帝国劇場ウェブサイト内『ラ・マンチャの男
http://www.tohostage.com/lamancha/index.html

 

こちらは歌舞伎俳優・九代目松本幸四郎主演の言わずと知れたロングヒット・ロングラン・ミュージカル、『ラ・マンチャの男』。『ドン・キホーテ』のお話を下敷きにしたものだが、内容の前にまずこの公演、1969年が初演で以来なんと46年も上演している。46年である。ミュージカルの本場でも『レ・ミゼラブル』の30年が最長なのに、ミュージカルがあまり浸透していないこの日本で46年。それだけ多くの人に足を運ばせ、そして飽きさせずに人気が続いているというのは凄いと言うより異常事態。しかもその46年間、ずっと同じ俳優が主役を務めている。松本幸四郎はまだ松本幸四郎ですらない時代から演じているのである(当時は六代目市川染五郎)。一体これは何なんだ?なぜこんなに人気なのか?松本幸四郎だからか?主演にとどまらずいつの間にか演出もしているし?

私にとっては『アニー』と並んで、日本人として一度は観ておきたいと思う二大(謎)日本語ミュージカル。

ちなみに『ラ・マンチャの男』自体は日本のミュージカルではなく、アメリカのミュージカルで、松本幸四郎主演の公演はその日本語バージョン。原題 は『Man of La Mancha』で、劇作家・映画脚本家 デール・ワッサーマン(Dale Wasserman)作。1964年に発表、翌年ブロードウェイに進出し、その年のトニー賞(映画でいうとアカデミー賞)を、ベストミュージカル賞を含め5部門受賞した。過去4回ブロードウェイでリバイバル公演が行われていて、つまりアメリカでも(日本ほどではないが)そこそこ人気がある。

内容:17世紀スペインの作家ミゲル・デ・セルバンテスと彼の書いた小説『ドン・キホーテ』をもとにしたもの。牢獄に収容されている作家セルバンテスと、同じ牢獄の囚人たちが劇を演じる。

娯楽要素たっぷりで、秋の夜長にとても楽しい時間が過ごせそう。

 

ところで、記事タイトルの「劇中劇」というのは専門用語で、演劇作品の中で行われる演劇のこと。二つの作品は趣向は全く違うが、どちらも劇中劇が、『マンザナ、わが町』では内容の、『ラ・マンチャの男』では構造の、中心になっている。

『NINAGAWA マクベス』 ー蜷川幸雄の真骨頂

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蜷川幸雄の『マクベス』、昨日観劇。

日本人ならみんな見るべき。

舞台を戦国時代の日本に置く、と聞いてかなりの「キワモノ」を想像していたが、全く違った。これは蜷川幸雄の真骨頂だ。

シェイクスピアの『マクベス』の芯にあるものは、人間の本性や、価値観、真実とは何か、といったとてもシンプルで、人間の根源的なテーマである。蜷川は純粋にそれを追及している。ただ、オリジナルがイギリス的・ヨーロッパ的価値観を意図せずとも大前提にしているのに対し、蜷川はそれを、日本の国と日本人がその長い歴史と文化の中で培い、受け継いできた、日本的価値観ーあるいは日本の精神ーで追及した。私たち観客が『NINAGAWA マクベス』で見るのは、まさに蜷川幸雄がそうしてたどり着いた、「日本」という一つの壮大な世界観なのだ。
舞台には桜の花びらが舞い散っている。華やかな剣戟。艶やかな打掛。怪しげな巫女たちの予言が、言霊となってマクベスを狂わせる。
こんなにも哀しく、美しい『マクベス』は日本人演出家・蜷川幸雄にしか作れない。

東京公演は10月3日(土)まで、渋谷・Bunkamuraシアターコクーンで行われている。
各日わずかながら、残席があるので、ぜひ行って観てほしい。

詳細・チケット購入(Bunkamura シアターコクーン):
http://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/15_macbeth.html

『尺には尺を』『お気に召すまま』見どころ

文学座公演『尺には尺を』『お気に召すまま』両作品のあらすじと見どころを「2月の観劇予定」に加筆した。

本日から3月4日まで公演。完売日多数、残席わずか。問合せ:文学座0120-481-034