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志田未来、初舞台! │ 『オレアナ』 速レポ

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昇進を目前に控え、安定した晩年の設計図で頭がいっぱいの若き大学教師[ジョン]。

一人の女子学生[キャロル]が彼の研究室を訪れ、授業についていけないとパニックに陥り、どうか単位を取らせて欲しい、と涙を浮かべて懇願する。

彼女を慰めようと、紳士的な態度で相談に応じるジョン。

しかし後日、キャロルがジョンを“ある理由”で大学当局に訴えたことにより、前途洋々だったはずの彼の未来は打ち壊されていく…。

言葉を尽くせば尽くすほど深まるディスコミュニケーションの溝。

彼女が彼を訴えた“理由”とは?彼は彼女に“何を”したのか?

(パルコ劇場ウェブサイト http://www.parco-play.com/web/program/oleanna/

 

志田未来田中哲司の二人芝居『オレアナ』、水曜日に観劇。

志田未来、良かった。

実は、見る前は期待していなかった。TVドラマや映画で演技が評価されているので意外だと思われるかもしれないが、カメラワークや編集の入る映像作品と目の前の固定された空間をリアルタイムで見せ続ける舞台とは違う。だからドラマ/映画でいいと思っていた俳優が舞台の上ではイマイチということはよくある。その上志田未来はまだ22歳、舞台は今回が初めてだ。だが、志田未来は私の予想を見事に裏切り、初舞台にも関わらず舞台用の表現をしっかり身に付けていた。ロングショットに耐える演技。日常の切り取りではないリプリゼンテーションの能力。2時間、集中力も切れることがなかった。すごい!すごい!すごい!初めての挑戦で新しい表現をここまで習得するとは!ものすごい努力家なのか?それとも初めから多様な見せ方を知っている天才なのか?どちらにしてもものすごい可能性を持った若き女優さんだ!

芝居の内容は一言で言って「タフ」。

チラシの紹介文には「セクシュアルハラスメント」「パワーバランス(力関係)」など社会性がありながら今では馴染みの単語が並んでいるが、「ああセクハラ問題を取り上げた作品か。」と知ったような気で観ると痛い目に合う。(いい意味で)

オレアナ』の登場人物は大学教員ジョン(田中哲志)と、ジョンのクラスの女子学生キャロル(志田未来)の二人のみで、キャロルがジョンの研究室に訪ねてきている、という状態で幕が上がる。そして全三幕、授業が全く分からないというキャロルとそれに応対するジョンの会話で進行するのだが、キャロルは考えが極端で発言が変で、ジョンは理屈っぽくて話が長く、その上二人はお互いに言っていることが伝わらないし相手の言葉を受け取らない。そんなのが延々と続いて、途中休憩に入るまでには私はもう田中哲司(ジョン)に「うるさい、だまれ」と思い、志田未来(キャロル)が大嫌いになってしまっていた。
その後話は大きく展開し、結末に向かっていくのだが、普通は話に沿って観ているこちらの気持ちも変化し最後にはカタルシスのようなものを得るところを、この劇は見れば見るほど苛立ちと憤りが募っていき、劇が終わっても私の心はさっぱり終われなかった。マメットは観客に何を期待していたのか、自分はこの劇をどう消化すべきなのか、答えの出せない問いが胸の内に強く、深く、渦を巻いておさまらない。マメット以前の演劇作品では、観客にこうしたことはここまで強く問われない。これが現代アメリカ演劇だ。

公演は11月29日(日)まで渋谷・パルコ劇場にて。残席わずか。各日開場時間から当日券の販売あり。

 

オレアナ
分類:演劇(アメリカ)
作:デイヴィッド・マメット(David Mamet)
翻訳:小田島恒志
演出:栗山民也
出演:田中哲司志田未来
日程:2015年11月6日(金)~2015年11月29日(日)
場所:パルコ劇場
チケット:(オンライン)ぴあ http://pia.jp/t/oleanna/ ・ローソン http://l-tike.com/oleanna/ ・イープラス http://eplus.jp/oleanna/