今年は「オペラ座の怪人」「エリザベス朝」この2つの年である。
ケン・ヒル版『オペラ座の怪人』が昨年末に9年ぶりの来日公演を行った。(紹介が公演終了後で申し訳ない。)
形式:ミュージカル
12月19日-29日・国際フォーラムホールC
作:ケン・ヒル
演出:マイケル・マクリーン
出演:ピーター・ストレイカー(怪人)他
料金:S10,000円・A8,000円・B6,000円
公演スケジュール:公演終了
公式HP
本
そして『オペラ座の怪人』の10年後を描いた、アンドリュー・ロイド・ウェーバーの新作ミュージカル『ラブ・ネバー・ダイ[ズ]』が3月から4月にかけ日本で初上演される。
『オペラ座の怪人』と言えばもっぱらイギリスの劇作家アンドリュー・ロイド・ウェーバーのミュージカルの代名詞だが、もとの作品はフランスの作家ガストン・ルルーがパリ・オペラ座の幽霊の噂をもとに1919年に発表した同名の小説。様々な人によりミュージカル化・舞台化・映画化されているが、ミュージカル化は上記イギリスの劇作家ケン・ヒルが1976年に初めて行い、1984年の再演で人気を博した。アンドリュー・ロイド・ウェーバーは実はこのケン・ヒルの作品から着想を得て作成、1986年に発表して世界的人気をさらった。(後日アーサー・コピットについてちょっと調べたところ、この人はウェーバーとほぼ同時期に制作したが、ウェーバーが先に出して売れたため苦労したらしい。)
そして2010年、ウェーバーは『オペラ座の怪人』の10年後の物語として、オリジナルミュージカル『ラブ・ネバー・ダイズ』を発表。それが今年、市村正親・鹿賀丈史のWキャストにより、日本で初上演される。
ちなみにウェーバーの『オペラ座の怪人』『ラブ・ネバー・ダイズ』は共にロンドン・キャストによる公演を収録したものがDVDで販売されている。(2012年、2011年。『オペラ座の怪人』は2011年にロイヤル・アルバート・ホールで行われた25周年記念特別公演を収録したもの。豪華なキャスト、壮大なステージは圧巻。)
DVD(日本語字幕付き):『オペラ座の怪人』『ラブ・ネバー・ダイズ』
<エリザベス朝>
エリザベス朝というのはイギリスで1558年から1603年まで続いた女王エリザベス一世の治世のことだが、今年はどうかしたのかと思うくらい関連の演劇がてんこもりである。
2月末から3月中旬にかけて、エリザベス朝前夜の女王レディ・ジェーン・グレイを描いた『9 Days Queen』、
『9days Queen:九日間の女王』
形式:ストレート・プレイ
2014年2月26日-3月16日・赤坂ACTシアター
作:青木豪
演出:白井晃
音楽:三宅純
出演:堀北真希、上川隆也、他
料金:S11,500円・A9,500
公演スケジュール(公式サイト内ページ)
チケット(席指定可):ACTオンライン・e+
座席表・会場アクセス
公式HP
4月から5月にかけて、長きに渡り繁栄のエリザベス朝を築いたエリザベス一世を描くミュージカル『レディ・ベス』が上演される。
『レディ・ベス』
形式:ミュージカル
2014年4月13日-5月24日・帝国劇場
作:ミヒャエル・クンツェ
演出:小池修一郎
音楽:シルヴェスター・リーヴァイ
出演:平野綾、花總まり(レディ・ベスWキャスト)他
料金:S13,000円・A8,000・B4,000
公演スケジュール(東宝サイト内ページ)
チケット:東宝テレザーブ03-3201-7777・ぴあ・e+
座席表・会場アクセス
公式HP
ヘンリー八世亡き後、エリザベス一世即位までの約10年間のイギリスは、大人たちの政治的策略と権力争いに若き王・女王たちが利用・翻弄され、またカトリックとプロテスタントの宗教対立に民衆が揺れ動いた荒廃と混乱の時代である。『9days Queen』のヒロイン、わずか16歳で女王となったレディ・ジェーンもその中で犠牲になった。その荒廃のイギリスを安定させ長い繁栄に導いた「ヴァージン・クイーン(処女王)」エリザベス一世もまた大人たちの政治に巻き込まれて波乱に満ちた若き日々を送った一人である。25歳で即位。なぜ生涯独身を宣言し、貫いたか、政治にどのような態度をとったのか、女王の生涯がまた興味深い。
そしてエリザベス朝といえば史上最高の劇作家、ウィリアム・シェイクスピアの活躍抜きには語れない。エリザベス女王は演劇好きであり、それがシェイクスピアの活躍を後押しした部分があるので、もし女王自身に聞けたとしても私と同じ意見を言うと思う。時代と才能が合致して至上の演劇が生まれた。
2月から3月初頭にかけて文学座が「シェイクスピア祭」と称し、後期の喜劇であり「問題劇」と呼ばれる『尺には尺を』と喜劇の代表作の一つ『お気に召すまま』を上演、
<どれを観るか>
最初『ラブ・ネバー・ダイ』をロンドンキャストのDVDで済ませることを考えてみたが、やはり日本初公演を観られるのにみすみす見逃すのは惜しい。そして市村正親さんが長年日本の『オペラ座の怪人』でファントム役を務めてきたことを思うと世代交代してしまう前に観たい。
『9 Days Queen』は日本人劇作家による新作だが、悲劇の若き女王レディ・ジェーンと堀北真希さんの物憂げな美しさの組み合わせは観てみたい。
『レディ・ベス』は、エリザベス一世の生涯の興味深さは上述の通り。しかもミヒャエル・クンツェ(というドイツの有名翻訳ミュージカル作家でありミュージカル作家。『エリザベート』を手掛けた人。)の新作で、なんと「世界初公演」。
『尺には尺を』と『お気に召すまま』は、小さな劇団などでもよく上演を見かける作品だが、それを文学座が上演するとなれば話は別で、歴史ある劇団が演ずるシェイクスピア劇を観たい。『尺には尺を』は演劇通と大人向け、『お気に召すまま』は初心者とラブ・コメディーが好きな人向け。
『荒野のリア』上演の「ティーファクトリー」というのは良く知らないが(「川村毅新作戯曲プロデュースカンパニー」とのこと)、『リア王』は四大悲劇の中でも美しい作品なのに上演を見かけるのは意外と少ない気がするのでこれも観たい。またシェイクスピアは自身の劇の中で道化を多用し、古来からの道化のあり方を飛躍的に進歩・発展させたが、中でもそれまでコメディーの存在だと思われていた道化を悲劇に登場させた『リア王』の道化は傑作である。
というわけで、やはりどれも観たいので悩む。
<書籍・DVD>
小説ガストン・ルルー『オペラ座の怪人』平岡敦訳(2013新訳)・長島良三訳
ケン・ヒル版ミュージカル『オペラ座の怪人』 原文
(訳本やDVDはない。CDも来日公演のたびにグッズとして限定販売されるのみ。)
DVD: アンドリュー・ロイド・ウェーバー ミュージカル
『オペラ座の怪人』25周年記念ロンドン公演
『ラブ・ネバー・ダイズ』オーストラリア公演
(共に日本語字幕付き)
アーサー・コピット版ミュージカル『ファントム』原文
(訳本・DVD共になし)
シェイクスピア
『尺には尺を』『お気に召すまま』『リア王』原文 いずれもアーデン版
和訳本: 小田島雄志訳 『尺には尺を』『お気に召すまま』、福田恒存訳『リア王』。悲劇は福田訳が良いような気がする。
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